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■医療情報の特性
● 医療情報とは
①診療過程で発生した患者個別の情報
②医療施設、地域あるいは国レベルでの疾病・医療に関する情報
③伝達的価値が高い診断・治療に関する医学知識
特性
①情報の表現形態が非常に多種類である(医療情報のマルチメディア性)
②情報の意味論的階層が広い
③プライバシー保護、セキュリティへの要求が高い
● 医療情報の形態的分類
表現形態からの分類
コード情報、数値情報、音情報、テキスト・概念情報、図名・波形情報、画像情報、知識情報、
媒体による分類
アナログ医療情報、デジタル医療情報、
● 医療情報の意味論的分類
患者個別的医療情報
生体情報、症候的情報、判断的情報、
診療施設、地域、国レベルの医療情報
施設医療情報、地域医療情報、国利ベルの医療情報
医学/医療知識
● 医療情報の法的保存期間
診療録 5年
処方箋 3年
その他の医療記録 2年
● 医療情報の利用形態の種類
一次利用 本来の目的である患者の診断、治療の目的に利用
二次利用 臨床医学の研究など本来の目的以外で利用
● 医療情報の利用環境の種類
①病院、②医院・診療所 ③健診施設・集団健診所 ④臨床検査センター
⑤人口透析センター ⑥保健所 ⑦臓器バンク ⑧検疫所
⑨消防署・救急医療情報センター ⑩リハビリテーションセンター
⑪老人保健施設 ⑫特別養老人ホーム ⑬公害監視センター ⑭厚生労働省
⑮都道府県保健・医療・福祉部などの行政機関 ⑯保健支払基金
⑰薬品製造・販売企業 ⑱医療機器・医療材料製造・販売企業
⑲在宅医療・介護関連施設 ⑳患者宅
● 医療情報の時間軸分類と特性
長期的な場合
年齢層によって異なる情報を収集
短期的な場合
急性疾患を主とする疾病の患者の医療情報
● 医療情報の分野別分類
①診断 ②検査 ③治療 ④薬剤 ⑤看護 ⑥医事
⑦病院管理 ⑧介護・福祉
● 診療情報の利用
医療情報には、患者から取得される情報だけでなく、
医師の判断した病名や処方、診断に至った思考過程、
患者や家族への説明も含まれる。
(1)取得目的の制限
診療目的以外の情報取得は許されない
(2)診療情報の利用目的
蓄積された情報が行政的な目的、
医学研究・教育目的に利用されることがある
①診療目的の利用
②病院管理のための利用
診療報酬請求、病院管理
③行政的利用
保健所への報告義務、警察への報告、その他行政機関への提供
④医学研究への利用
治験、前向き臨床試験、追跡調査、後ろ向き研究
(3)診療情報利用の効率化
データベース化
(4)プライバシーの保護
(5)公益利用の保証と医学倫理委員会
利用計画の公益性と患者のプライバシー保護の担保が必要
研究目的利用は研究者の独断ではなく、倫理委員会の審査が必要
● コードと用語の関係
分類とコード
ICD10 国際疾病分類コード
■医療情報システムの特性
● 統合病院情報システム
①
電子カルテシステム
②
オーダリングシステム
③画像系と連動した病院情報システム
④物流と連動した病院情報システム
⑤経営分析に連動した病院情報システム
⑥グループウェア活用システム
● 病院内部門システム
1)診療部門
電子カルテ、オーダリング、診療情報参照、クリティカルパス、予約システム
2)検査部門
臨床検査、細菌検査、病理検査、生理機能検査システム
3)放射線部門
RIS、PACS、レポーティングシステム
4)手術・輸血部門
手術情報管理、患者生体情報、物品管理、手術室環境監視、
輸血オーダリング、
自己血オーダリングシステム
5)看護部門
看護管理、看護業務支援、患者看護支援、ベットサイド、地域看護システム
6)薬剤部門
処方チェック、薬袋作成、散剤鑑査、自動錠剤分包機、注射剤薬調剤機、
差薬剤情報提供、薬剤管理指導業務支援システム
7)歯科部門
8)診療情報管理部門
DPC、統計処理、癌登録、退院時サマリシステム
9)事務部門
医事会計、財務会計、人事給与、シセプト電算処理、物流・物品在庫管理、
経営管理・支援システム
10)給食部門
給食オーダ、給食管理、栄養指導システム
11)健診部門
人間ドック、自動化健診システム
● 施設間連携システム
1)医療機関連携システム
患者紹介支援、遠隔医療システム
2)地域医療情報システム
救急医療、保健活動支援、在宅医療支援、在宅福祉支援、僻地医療支援、
癌登録、自治体ネットワーク、
医師会ネットワーク、感染症サーベイランス、臓器移植情報ネットワーク
3)医療情報サービスシステム
中毒情報、医薬品情報、医学文献情報サービス
● 先端医療システムの種類
(1)遠隔医療システム
①DCP 映像システムを用いた患者対面診断
テレケア(在宅医療)
②テレコンサルテーション 専門医による遠隔支援
テレパソロジー、テレラジオロジー
③遠隔教育
具体事例
①僻地・離島に対する医療支援
②テレパソロジー 緊急避難的な遠隔医療実施
病理標本を画像伝送し、遠隔地の専門医のセカンドオピニオンを得る
③テレラジオロジー
難読レントゲン画像の読影、重症患者の搬送必要性の有無判断
④テレホームケア
⑤国際医療教育
⑥テレロボティック外科
⑦テレカンファレンス
(2)VR技術応用医療システム
VRとは、現実の空間とは別の仮想空間を作り、コンピュータ内のデータベース
やモデルと対話する環境を構築する。
①CIS
術前の患者画像データから可視化技術により対象臓器の3D-VIを作成し、
手術計画を作成する
②仮想内視鏡
X線やCT、MRIの撮影時間と解像度の向上で仮想の内視鏡を実現
③VR治療
④VR医学教育
● 個人の健康に関する記録の電子保存
(1)診断に関する記録の保存の法的要件
①患者の診断を効率よく円滑にするため
②診療行為の証拠、医療の妥当性を後から検証
③診療報酬請求
(2)電子保管の利点
①保管スペース
②検索性
③長期保管
(3)電子保管の問題点
①機器と電力が必要
②ハードディスク故障による影響が大きく、対策にはコストがかかる
③プライバシー保護にとって危険
(4)電子保存の条件
①真正性の確保
情報作成に関する責任の所在が明確で、いったん作成された正当性を保つ
②見読性の確保
必要に応じて利用でき、画面や印刷装置に出力できる
③保存性
①と②が保存期間内は保たれる
留意事項
運用規定を定めること、プライバシー保護
(5)条件の実現
電子保存の条件とは安全性(セキュリティ)を確保する条件
認証と監査証跡
指紋認証、ICカード利用
● 電子カルテ
(1)電子カルテの段階
レベル1 部門内で電子化された患者情報を扱う
レベル2 部門間をまたがる電子化された患者情報を扱う
レベル3 一医療機関内の患者情報を扱う
レベル4 複数の医療機関をまたがる患者情報を扱う
レベル5 医療情報のみならず保健福祉情報も扱う
(2)目的と用途
一次用途
①受けるサービスの記録
②提供したサービスの記録
③警告機能、EBM提供を含む診療支援
④患者のケアの計画立案と実施の根拠
⑤患者診療のアウトカム、プロセスの評価の根拠
⑥包括(DPC)、出来高払い保険請求の根拠
⑦患者医療コスト算出の根拠
二次利用
①統計資料
②臨床研究、疫学研究
③臨床試験、治験
④教育訓練
⑤診療情報化管理
(3)電子カルテの機能要件
①医師、看護師の入力負荷を実用レベルに抑える優れた
ユーザーインターフェイス
②診療科で利用される検査機器を含む
診療関連デバイスとのインターフェイス
③用語述語、医療材料関連マスタ、メッセージ交換の
標準成果物の実装と維持
④十分な患者のプライバシー保護対策
● 要求分析手法
システム開発手法
①ウォーターフォールモデル
②プロトタイプモデル
③スパイラルモデル
要求分析や現状分析の手法
①KJ法
②ブレーンストーミング法
③面接調査法
④連関図法
⑤系統図法
⑥DFD法
⑦ER法
● 医療・保健・福祉分野の諸ニーズ
(1)社会のニーズ
多様化と高度化
(2)患者のニーズ
良い医療、良い医師に関する情報提供
(3)医療関連機関ののニーズ
医療の効率を追求しつつ、質の向上を図る
(4)保健・福祉関連機関のニーズ
● 標準化の技術的動向
(1)HL
医療情報交換のためのデータ形式
入退院、診療受付、各種オーダー、結果参照、会計、マスターメンテ、多バイト文字扱い、
Query Language、免疫情報、薬剤副作用、臨床試験、予約、紹介、プロブレンリスト
(2)DICOM
医用画像の規格
● 医療情報システムのセキュリティ評価視点
患者情報は個人の情報を取り扱うので、厳しい対応が必要である
①患者情報を取り扱う規約が成文化
個人情報保護法の観点
②医療情報システムへのアクセスに関する明確な規約、実効の伴う手段、定期的なチェック
③蓄積データについては電子保存の3条件を満たしているか
④ネットワークへの侵入防止と、物理的な安全の確保
⑤他機関とのデータ交換では相互の認証方法、暗号化などの手段
⑥セキュリティ教育を定期的に実施
⑦緊急時の情報利用
● システムの貢献度の評価
①医療のリスク管理と安全管理
インデントとアクシデント報告と分析、バーコードの活用による誤認防止
②医療の質の向上
EBMやEBN、患者への情報開示
③医療の効率化
④投資効果
⑤経営への寄与
⑥病院管理
職員の満足度
■
医療情報システムの現状分析
● 要求分析手法
システム開発手法
①ウォーターフォールモデル
②プロトタイプモデル
③スパイラルモデル
要求分析や現状分析の手法
①KJ法
②ブレーンストーミング法
③面接調査法
④連関図法
⑤系統図法
⑥DFD法
⑦ER法
● 医療・保健・福祉分野の諸ニーズ
(1)社会のニーズ
多様化と高度化
(2)患者のニーズ
良い医療、良い医師に関する情報提供
(3)医療関連機関ののニーズ
医療の効率を追求しつつ、質の向上を図る
(4)保健・福祉関連機関のニーズ
● 標準化の技術的動向
(1)HL
医療情報交換のためのデータ形式
入退院、診療受付、各種オーダー、結果参照、会計、
マスターメンテ、多バイト文字扱い、
Query Language、免疫情報、薬剤副作用、臨床試験、
予約、紹介、プロブレンリスト
(2)DICOM
医用画像の規格
● 医療情報システムのセキュリティ評価視点
患者情報は個人の情報を取り扱うので、厳しい対応が必要である
①患者情報を取り扱う規約が成文化
個人情報保護法の観点
②医療情報システムへのアクセスに関する明確な規約、実効の伴う手段、
定期的なチェック
③蓄積データについては電子保存の3条件を満たしているか
④ネットワークへの侵入防止と、物理的な安全の確保
⑤他機関とのデータ交換では相互の認証方法、暗号化などの手段
⑥セキュリティ教育を定期的に実施
⑦緊急時の情報利用
● システムの貢献度の評価
①医療のリスク管理と安全管理
インデントとアクシデント報告と分析、バーコードの活用による誤認防止
②医療の質の向上
EBMやEBN、患者への情報開示
③医療の効率化
④投資効果
⑤経営への寄与
⑥病院管理
職員の満足度
■
医療情報システムの設計開発業務
● 医療情報システムに求められる社会的要件
(1)医療機関の目的と医療情報システムの機能要件
①安全であること
②24時間365日使用可能なこと
③処理が早いこと
④処理が確実であること
⑤使用者が余分な訓練と負担が少ないこと
⑥故障に強いこと
⑦費用対効果
⑧医療の質を上げるための支援
⑨標準的なシステム
(2)医療情報セキュリティ
情報の保護と緊急時の参照が矛盾した要求
システム利用とデータ参照のアクセス権限を多次元的に定義
不正アクセスを検知して漏洩を防止する方策を用意
(3)情報開示に関する医療情報システムの機能要件
患者への情報提供
①処方薬剤内容や副作用の情報
②紹介状や退院要約
③診察結果や画像の提示
④診療記録の開示
⑤患者の自宅からの診察結果の照会
(4)情報の保管に関する規則
保管の3条件
真正性、見読性、保管性
万一に備えでの対応 バックアップ
● 病院の各部門の業務内容
(1)病院にある各部署・部門とその役割
1)病院事務
医事業務と病院会計 医療費計算、レセプト作成
2)診療部
医療行為の中心 診療科より構成される医局の形態
3)看護部
医師と連携して外来診療や入院診療を補助
4)薬剤部
処方による調剤、薬品の購入、薬に関する情報収集と提供、服薬指導
5)検査部
検体検査、細菌検査、生理機能検査など
院内感染防止対策
6)病理部
病理診断 病巣部分の一部の組織を顕微鏡で観察して診断
病理解剖 患者の痛いの解剖により病気の実態と原因を調べる
7)放射線部
放射線を利用した画像検査や画像を取り扱う検査
8)手術部
手術室の管理
9)材料部
患者に使用する検査・治療・看護などの器具・器材を安全に効率的に供給
使用後の回収・洗浄、組み立て・包装・滅菌保管
10)理学療法部
障害に対して治療補助
理学療法、作業療法、言語療法などにより機能訓練と薬物治療
11)光学医療診断部
内視鏡、レーザーなどによる光学療法
12)血液浄化療法部
透析療法部ともいう
13)輸血部
血液製剤の保管管理、自己血採決
14)栄養部
給食管理業務、栄養指導業務
(2)病院の各部署で発生する情報の内容、性質、および部門の業務フロー
患者動線と情報の流れ
診療受付 初診か再来院
初診の場合は患者基本情報を医事システムに入力
患者基本情報は診療システムに入力
医師の診断 診療システム
患者基本情報に対して各種オーダーを入力
診療システムは各種オーダーを各部門システムに入力
放射線部や検査部 部門システム
検査結果を診療システムに返す
薬剤部
処方情報で処方箋交付
会計窓口 医事システム
医事システムで会計処理
● 医療情報システムの各サブシステム
(1)サブシステムの種類と必要な機能
①医事会計システム
②検査システム
③薬剤システム
④看護システム
⑤放射線システム
⑥材料(物流)システム
(2)情報連携機能
各サブシステム間の情報授受と連携機能
患者サービスの向上
診療業務の効率化
(3)病院情報システムに応じたサブシステムの重要性
病院の規模 ベット数や外来患者数で異なる
大規模病院 各部署でサブシステム化した部門システム保有 サブシステム間の連携重要
小規模病院 各部門で独立した部門システム システム連携がないか単純
● 医療情報システム導入に伴うリスク
(1)コンピュータ化による業務の変更
ITが病院運営を支える基幹技術になっていると合理化されるが、コンピュータ化が目的化すると合理化できないこともある
コンピュータ化の当該一部門だけでなく、関連部門も巻き込む必要がある。
コンピュータ化による業務の変更が間接的にかかわる部門に影響する
(2)コンピュータ導入目的の明確化
コンピュータ化によって何をするか、目的を明確にする
(3)情報システムの障害
ハード障害 二重化対応、必要最低限
ソフト障害 不具合の発生 業務の代替
処理負荷 処理能力の評価と資源管理
● 諸ニーズに応じた医療情報システムの構築
システム担当者の役割
現状を分析、どの範囲のシステムをどの順番で導入するか戦略立案
医療現場では
システムの不具合は、安全な医療提供阻害の重大な要因になる
多数の例外運用がある
新しい技術でも現実的な費用の範囲で利用可能か確認が必要
導入検討では
既に他の病院での稼動実績があるものは導入の検討に値する
ユーザ側からのカスタマイズ要求は不可能なものもあり、現実的な 妥協法必要
他院での運用を参考に運用を変更することも選択肢
複数のベンダーから広く情報収集
開発期間と運用体制の検討を十分に取る
導入の順番、優先度、段階的な導入が安全
● システム導入に必要な諸条件
病院全体の課題としてシステム導入の戦略を立てる
他の病院の状況やベンダーの開発状況の情報収集に努める
各サブシステム毎の目的を明確にして、どのように実現するかの観点で検討
システム導入に伴う負担増加の緩和する方法、人員配置など
予算とのバランス
費用対効果の検討
検討体制 サブシステム毎の検討会議、全体を把握するシステム担当者
● システム企画・開発会議への参画
システム導入の範囲と運営方法の変更
ヒアリングの実施、要望をまとめ、システム検討会議、病院運営会議で検討
ベンダーに概算の見積もり依頼、システム範囲の再検討
サブシステムの詳細検討、現状の運用と例外運用、運用変更の内容、部門間の調整
システムの仕様書作成
パッケージ機能の調査、要求機能との調整
ベンダーの入札 ベンダー側の意見書の検討と対応策
システム詳細設計 パッケージでの実現方法、実現できない部分の機能仕様
● プロジェクト会議への参画
入札ステップ
①概算要求資料の作成
どのサブシステムをどの業務に導入するか決める
②ベンダーからの資料請求
③仕様書の作成
検討会議 フリートークの要望抽出から焦点を絞った機論へ
④意見書を考慮した仕様書の修正
⑤入札の手続き、ベンダーの決定
⑥詳細な機能使用の作成
⑦マスターの作成
標準的なマスターの採用
⑧プログラムの検収
試験稼動環境での検収
⑨ユーザの教育訓練
マニュアル作成、業務にそったものは病院側で作成
⑩ハードウェアの設置
⑪リハーサル、本番運用開始
⑫システム不具合情報の収集と対応
● 統合的病院情報システムの設計目標
1)オーダリングシステム
①処方オーダ
②注射オーダ 注射剤の一本渡しの運用で有効
実施情報の把握が必要、変更が多いため
③輸血オーダ 使用ロット、ロット追跡
④検体検査オーダ 検体ラベルの発行
⑤画像検査オーダ フィルム枚数、造影剤などの薬剤、特殊材料の報告必要
⑥食事オーダ
⑦処置オーダ 医師から看護師への情報伝達
2)患者の基本情報の登録・管理
統合的な管理、二重入力の回避
3)手術申し込みと実施記録
手術の予定情報の伝達
手術の内容の記録
4)予約システム
外来の予約、検査の予約、診察の予約
受ける側が取る予約と実施側が決める予約がある
5)入院中の患者の移動を登録するシステム
入院患者と外来患者では処理の仕方が異なるので区別が必要
入院予約、入院登録、外泊、転棟、転室、退院の登録
6)診療情報の保存機能
電子カルテ 記録と保存の機能
①病名
②検体検査結果
③レポート
④退院時サマリ
⑤実施記録
投薬、処置、検査の実施記録など、診療録に記録されない項目
⑥診察記録・看護記録
入力支援機能が重要
7)PACS
医療画像をデータベースで管理、端末から照会可能
DICOMによる標準技術が基盤
8)物流システム
病院の中で扱われ物品を必要な時の速やかに配送し、
無駄を少なくする仕組みとする
物品マスターの情報共有
9)分析のためのシステム
データウェアハウスとOLAP
臨床研究、病院活動評価
● 統合的病院情報システムの仕様書作成
(1)仕様書概要説明
①調達の背景と目的
②調達物品および構成内容
③調達の種類
④技術的要件の概要
⑤その他
(2)調達物品の備える技術的要件
①システム全般に関する基本的要求要件
②ハードウェアの技術的要件
③ソフトウェアの技術的要件
④設置条件
⑤開発・保守・支援体制など
(3)資料
①病院の全体図
②ネットワーク構成図
③部門端末機器設置一覧表
④電算化対象業務、開発計画概要
⑤システム導入スケジュール
⑥接続機器一覧
⑦現有システム機器構成図
■
医療情報部門システムの設計と開発
● 部門システムの設計
病院情報システム
部門間の情報交換を主目的とするシステム
部門内の業務を支援することを主目的とする部門システム
・外来や病棟の診療部門の診療現場からの情報を入力する機能や
紹介する機能は部門システムとしては独立しては設計できない
・看護師が関わるシステムは、各種部門システムの情報を統合して別の形で
見せたり、出力したりするものであるため、
部門システムと独立させることはできない。
● 診療部門システム
(1)診療情報利用の特性
①医療専門職の思考過程と行為の過程
医療行為を行ううえで必要な情報収集、整理統合、判断、意思決定、
評価過程の記録媒体
②チーム医療の媒体
すべての医療専門職が閲覧
③情報開示のための媒体
④診療行為の社会的証拠および病院管理の原資料
⑤学術利用のための原資料
⑥社会的安全と医療政策立案の原資料
薬害対策、事故防止などの社会安全対策、癌対策や成人病予防
(2)利用目的への配慮
患者の知る権利
情報の流れをコントロールする権利
一次利用 直接、間接的に患者の利益に結びつく利用
二次利用 社会の福祉目的に利用
診療形態による違い
外来診療、入院診療、在宅訪問診療
(3)施設機能による違い
一般病院、療養型病院、精神病院、国立がんセンター、国立循環器センター、
大学病院、教育・研修病院、プライマリケアを行う診療所、
老人保健施設の介護医療、訪問医療
(4)診療形態による違い
外来診療
多数の患者を短時間に診察 簡潔な操作性、外来の断続的な病歴照会
診療科目による違い 複数患者の診察 患者確認とデータ入力操作の利便性
患者の待ち時間の短縮
患者への情報提供正しい服薬指示、処方箋の提供
入院診療
情報の継続性
外来情報システムからの情報の連続性
入院に至る経過要約や問題リスト、診療計画の初期情報入力
(5)急性期医療と慢性期医療による違い
診療情報は重症度が高いほど情報の発生頻度、密度が高くなる
急性期医療
急激な病状変化に対処するため処置変更が頻繁
情報の欠落、伝達の遅延、確認の欠落がトラブルの要因
時間席制約が大きい、プロセスの雛形(クリティカルパス)を導入し、
カレンダー形式に表示、項目の追加と変更
慢性期医療
病状の推移が緩慢
内容が定型化
①表示単位
急性期 24時間単位
慢性期 週単位
②表示単位
診療科によって異なる
内科、外科系 バイタルサイン、検査、投薬歴、水分バランス
精神科 患者の愁訴、精神的反応、行動の観察項目が時系列
眼科、歯科 画像
(6)技術的機能要件
1)目的思考型操作性
診療部門の情報システムは、臨床情報管理システムとして設計
診療分野ではPlan-Do-Seeではなく、逆のSee-Do-Planである
2)目的別の検索性
情報をさまざまな軸で展開参照
3)伝達様式の共通性
他医療機関との情報連携のためにも、標準的なデータ形式使用
4)情報アクセスの管理
● 臨床検査システム
(1)検体検査システムの基本的な機能
1)検査依頼情報
2)検査受付処理
外来患者の検査はリアルタイムに会計情報の処理が必要
検体にバーコードラベルの利用
3)検体検査業務
①検体受付
②データ収集
③精度管理
④結果の報告
⑤検査統計
⑥その他の業務
検査診断薬や検査材料の在庫管理
(2)生理検査システムの基本的な機能
生理検査は予約検査が多い
検査結果は画像や波形を多く含む、ファイリングシステムが多く導入されている
1)心電図検査
2)呼吸機能検査
3)超音波検査
(3)安全管理対策
臨床検査データは再現できない貴重なデータ、データの改ざんや消失を防止
1)ハード面
二重化
2)セキュリティ面
システムのアクセス管理
外部システムとの接続時のファイアーウォールの構築
(4)まとめ
情報のマスター化
テーブル管理
● 放射線部門システム
RIS 放射線診療情報システム
PACS 医用画像保管通信システム
HIS 病院情報システム
(1)設計上のポイント
1)HISとの接続
2)画像表示のレスポンス短縮
3)フィルムレスと画像保管の問題解決
フィルムレスは放射線診断医のコンセンサス必要
4)標準規格の採用
DICOMの採用
5)病院による差異の取り入れ
画像診断レポートと画像そのもののどちらが病院内流通で優先か
6)経済性について充分考慮
画像表示端末は高価になるため、稼働率の予測を含め事前に調査必要
(2)設計の手順
1)現状分析
2)フレームワーク、ワークフロー
3)端末台数の設置と最適化
4)RFP作成
5)提案の分析
6)予算と見積もりの競合
7)機種選定あるいは企業の選定
8)最終的な仕様の検討と契約
● 手術・輸血部門システム
(1)手術部門システムの概要とその設計
1)手術情報管理システム
手術受付から手術台帳作成までに発生する一連の手術情報を
総合的に管理、部門間で共有化する
①患者情報
②病名/手術術式関連
③手術基本情報
④医事関連情報
⑤手術時間関連情報
⑥手術スタッフ関連情報
⑦麻薬関連情報
2)患者生体情報システム
麻酔医に患者の循環動態・呼吸動態の情報を的確に提供する
患者の生体情報の共有により術中・術後の業務連携を円滑化
3)物品管理システム
手術中に使用する医薬品・医療材料の有効期限や現物確認し、
患者に使用した物品を正確に把握する
医療の安全確保と的確な医事請求に必要
4)手術室循環監視システム
手術室の清浄度維持、術中感染防止
手術室の温度、湿度、微粒子数、麻酔余剰ガスの計測をし、
清浄度の悪化に警告を出す
(2)輸血部門システムの概要とその設計
血液の入出庫における製剤血液型の確認、
患者血液検査と過去の検査歴の照合、
交差試験済みラベル・血液払い出し表・払い出し台帳
バーコードの利用により事務作業の省力化とチェック体制の強化
1)血液オーダリングシステム
病院全体に血液を安全かつ迅速に供給
患者の血液との照合
血液製剤の製剤種類、血液型、ロット番号の管理
輸血時の循環血液量の計算、
輸血療法のガイダンス表示などの支援システム
輸血検査
血液製剤の払い出し作業、未使用返却、使用数量の確定
手術に使用される血液の使用量とや種類を予測して計画的に準備
2)自己血液オーダリングシステム
手術で使用する血液を事前に患者の血液を採取して保存
血液感染の確認が必要、医療スタッフへの感染防止
● 看護部門システム
看護業務の合理化を目指すシステム開発
(1)看護管理システム
看護勤務表の作成、看護職員情報管理システムなど
職員の経験と技量に応じた適正かつ公平な勤務
(2)看護業務支援
医師の指示に基づく診療の補助業務
指示の転記による情報の欠落とミスの防止、要する時間短縮
医師がオーダを入力、看護ワークシートに出力
(3)患者看護システム
看護過程のすべてのプロセスから収集できるデータを蓄積し
活用することを支援
標準看護計画、看護診断のシステム化、POS、クリニカルパスの応用
(4)ベットサイドケア支援システム
携帯端末による患者看護支援
初期はバイタルサインのデータ入力
最近では薬や検査結果の照会
今後はリスクマネジメントの支援
患者ID化、バーコードのリストバンドの利用など
患者取り違いのセイフティ管理、責任の所在のアリバイ管理
(5)地域看護における情報システム
訪問看護ステーションにおけるIT化が活発
訪問看護では発生する問題点が多く、各種報告書の負荷が高い、
利用者情報のスタッフ全員での共有が難しいなど
(6)看護のシステム化に重要な役割を果たす
マン・マシーンインターフェイスの発展
簡便で正確な入力
ライトペン、タッチパネル、マウス、バーコードスキャン
● 薬剤部門システム
調剤業務支援 自動化機器
薬歴管理 医薬品と処方情報の一致チェックのシステム
(1)処方チェックシステム
検索では2文字以下での検索では選択エラーが多い、3文字以上で検索
医薬品の選択と患者の疾患の適合
特定の疾患に罹患している患者に使用禁止されている薬剤のチェック
添付文書に記載の検査の実施
分量の制限チェック
適宜増量の場合の症状詳記
用法 服用回数、服用時期、外用の場合は使用部位、使用方法など
用量 投与総量 投与日数や投与回数(注射剤)
(2)薬袋作成システム
一回量を袋に記載
薬品名、適応症、副作用などの表示
調剤したもの、錠剤の粉砕はその旨の説明必要
(3)自動錠剤分包機
1回に服用する錠剤を1袋に分包するシステム
(4)自動注射剤調剤機
注射剤のピッキングマシーン
(5)散剤鑑査システム
散剤瓶のバーコードでの照合、分量と用量から計算された必要な量と
秤取された量とをチェックをする
医療事故防止の観点から普及しつつあるシステム
(6)薬品情報提供システム
患者に調剤した医薬品に関する情報提供
医薬品名、服用時期と服用量、効能、副作用、服用上の注意、
画像情報を表示した一覧表
(7)薬剤管理指導業務支援システム
入院患者に対して処方された医薬品をカレンダー形式で表示する薬歴表と
注射剤を含めた薬品情報提供書を作成とともに、
服薬指導内容を記録するシステム
● 口腔領域のシステム
(1)口腔領域での疾病の特徴
1)部位の概念
2)歯の交換 乳歯から永久歯
3)歯と歯周の状態表記
4)歯のないことの表記
5)口腔領域での診療の進め方
患者が入れ替わるのではなく、患者は電動チェアに座っていて歯科医師が
チェッアを移動する
6)診療に必要な技工物
(2)設計目標
1)病名登録システム
2)処置経過入力システム
患者の治療経過の記録、個々の歯に対する処置の記録
3)診察予約システム
担当医とチェッアの予約
4)画像システム
歯の部位情報と撮影情報をリンクさせておく
5)医事会計システム
保健請求の整合チェック
病名、部位、処置のチェック
6)処方システム
7)その他
自費と保険がある
● 診療情報管理システム
(1)診療情報管理部門における診療情報管理
1)診療録、診療所記録の収納保管、
2)貸し出し要求への対応
3)退院患者の記録対象
4)入院中の患者は対象外
5)外来診療録も対象としていないことが多い
6)診療録の価値と有効性を発揮できるようにする
(2)診療録管理体制加算
①過去5年の診療録、3年の手術記録の保管
②診療記録が疾病別に検索・抽出できる
③ICD分類に基づく入院患者の疾病統計の作成
④退院時要約の作成
⑤患者に対する診療情報の提供
(3)DPCと診療情報管理
1)DPC診療群分類 による診療報酬の包括評価のデータの作成
2)データ提供の業務
(4)情報システム
1)診療情報管理部門の情報システム
①診療録の出納・保管
②統計処理、医療評価、病院評価の指標創出
③包括評価データ作成
④診療情報の提供と公開
(5)退院時要約
要約で診療情報の8割を集約できる
医師が作成するので、医師が入力するシステム
情報参照系システムとリンクされる
傷病名や手術名で検索可能
(6)傷病名のコーディング
ICD10の分類コード
標準病名マスターは永久不変の管理コードが付加されているが、
外部コードとして使用すべきでない
(7)手術・処置名のコーディング
ICD9-CMを用いる
現場で使用している用語も記録として同時に残す
(8)統計処理
1)他の医療機関との比較、情報交換のためできるだけ標準化された
項目、基準、書式での統計資料を作成
2)統計資料の活用 医療の質の評価、安全性の評価、効率性の評価、
病院経営の評価
3)過去の退院患者のデータ、現在の状態は把握できない
(9)DPCと診療情報管理
1)DPCでは傷病名、手術・処置名が決まれば自動的に診療報酬が決まる
2)ICD-10のコーディングが求めらている
3)ICD-11のコーディング能力が決めて
4)標準病名マスターとレセプトマスターが統合
(10)院内癌登録
1)退院を基準として登録患者の情報を取得
2)目的は
①登録患者の追跡調査、治療中断防止
②研究活動への登録データの提供
③各機関への登録協力、地域がん登録への届出
3)退院時要約と同様に医師が作成
4)通院データとのリンクが必要
5)入院に至らない通院患者
(11)データの限界
1)過去のデータ、リアルなものでない
2)外来のデータがない
3)退院時サマリーに記録されないデータは検索できない
4)医事会計システムの方が長期間にわたり広い範囲でカバーされている
● 事務部門システム
(1)医療機関の事務部門
1)医事会計部門 診療報酬請求
2)事務管理部門 病院の経営資源の集約
(2)事務部門情報システムの目的
1)当該業務の省力化、正確化、効率化
2)病院経営戦略の意思決定支援
3)財務分析と経営分析
4)診療科別の原価計算の手法の取り入れ
(3)他部門情報システムとの連携
1)事務部門は経営資源情報の集約
2)各部門システムは経営資源情報の迅速かつ効率よい提供
(4)医事会計システム
1)部門の性格とシステムの機能
診療報酬請求を業務とする
患者登録と診療行為から診療報酬点数を計算、患者負担を請求し、
公費請求、保健請求のための診療報酬請求書、診療報酬明細書(レセプト)を
発行する
患者の請求・未収管理、医療債権、保留レセプトの管理
2)診療行為データの取り込み
3)点数計算の自動化
4)包括化、定額項目と実施行為の記録
5)再来受付機、自動入金機の接続
6)院外処方箋と医事入力
7)診療情報の開示支援
(5)レセプト電算処理システム
1)平成18年までに7割の病院に導入計画
2)医事会計システムが古いとデータ変換が必要
3)院内審査にはペーパー出力が必要
4)2年に1度の点数改定ごとに改造が必要
5)レセプト電算システムを前提とした医事会計システムの導入が必要
(6)人事給与部門システム
全体の職員の状態と勤務状況の把握
看護部門の部門別看護師の勤務状況は病棟管理日誌システムや
外来管理日誌システム、病棟時間外勤務管理システムとインターフェイス
他の部門でも部門管理日誌から部門職員の勤務状態を取り込む
複数部門で勤務する医師、看護師、事務職員の勤務実績データの入力
(7)財務会計・経理部門
病院会計準則に基づき、貸借対照表と損益計算書を作成
給与比率、材料比率、経費比率を計算し、内部鑑査に適用
医療機関の会計制度 公益業会計 複式簿記と予算科目、勘定科目
今後はキャッシュフロー会計へ
原価計算の手法の導入により、部門別の課題を明確にする
(8)用度課の物品管理システム
1)物品の管理を行う
2)病院内のすべての物品を取り扱う
3)適正・迅速な発注と払い出し、不正使用、デットストック、保健請求漏れ防止
4)物品管理
発注、払出管理、在庫管理、消費実績収集、支払管理
5)補給搬送まで含めた物流管理
6)高価な材料は、発注、納品、払出管理を一元的に実施
7)物品にバーコード表示、消費管理とリンク
8)物の流れと情報の流れを一体化
(9)原価計算システム
損益分岐点分析で採算性を評価
利益予測と利益計画立案に役立てる
1)部門別原価計算
外来部門は科別、入院部門は病棟別、間接部門は部門別
医療収入は医事会計システムからデータ入手
原価は給与費、材料費、経費、委託費、研究材料費、原価償却費など
部門別に積み上げ、間接原価は配賦基準で部門に配賦
2)科別原価計算
病棟部門も科別に部門設定する
分離の難しい場合は、科別の患者数比率や科別収益比率で配賦
3)行為別原価計算
原価を固定費と変動費に分ける
採算性などの評価
4)疾病別原価計算
入院患者の入院から退院までの一連の診療行為に対する原価の算出
DPCでは定額制なので厳格なコスト管理が必要
疾患ごとの標準原価の設定、実際原価との差異分析を行う
標準原価にはクリティカルパスを利用
レセプトベースの情報システムではなく、
各部門のリソース消費量や稼動実績の定量データが
抽出できるシステムが必要
● 部門別システムの仕様書作成
部門システムは比較的病院ごとの運用の差は少ない
パッケージを想定した仕様書の作成で問題はない
他のシステムや統合的病院システムとの接続の仕様が難しい
物理的な接続方法、機器の設置とネットワークの設定
交換する情報の種類と交換方法の規定(標準的な規約を取り入れる)
マスターの管理では 桁数などの整合性に注意
具体的な接続がなくても接続先にデータを出せるように配慮する
■
医療情報システムの運用能力
【ハード・ソフトの維持管理】
● ハードの維持管理
①24時間ノンストップの運用
リスク管理が重要
障害発生の内容、頻度、対応策をリスト表にする
障害時の対応を機関の責任者が承認し、関連部門に周知徹底する
②運用実態の正確な把握
多種多様な機器の設置場所、運用管理者、障害対応手順などを把握する
定期的にチェックして確認する。
● ソフトの維持管理
①ドキュメントの整理
システム全体図とサブシステムの構成図
個々のデータベースの構造と機能 → データベース設計書
サブシステムごとのプログラムと画面の一覧、それらの変更履歴
プログラムリストと一覧表
②医療情報技師の役割
ソフトウェアの維持管理の推進
変更履歴の管理、データベースの管理
システムの設計に参画 データの継続性などに注意する
現行システムの完全な把握する
③データの維持管理
1)マスター維持管理と監査
素データを対象としたもの、病名や医薬品マスター
標準コートを使用する
過去の遺産との関係 独自コードは標準コードに変換が必要
医師の理解と協力が不可欠、変換が容易な環境を提供
業務を制御するマスター 点数マスターなど
変更に対してバージョン管理
マスター変更に伴うシステムの変更
総合テストの網羅性とテスト結果の判定基準の明確化
2)データのバックアップと維持管理
バックアップは日常的な業務
正常終了でも確認を怠らない データ量や増加量に注意
バックアップ後の削除は、バックアップの正常終了の確認が重要
データ量増加に伴うレスポンス対応としてのリストア
データベースの最適化
夜間のバックアップで処理時間だけでなく、
失敗時のリカバリーの影響も考慮する
【利用面での維持管理】
● 紙ベースでの運用体制確保の重要性
障害発生時の伝票システムによる運用への切り替え
緊急時対応マニュアルの作成
障害時のシュミレーションと事前準備
院内の連絡体制の整備
● システムの運用記録の重要性
行ったことが正常に終了したことの確認の記録を残す
記録が確実にできる手順と記録方法を工夫する
①定期的な計画的なシステム運用に関する記録
決められたスケジュールで確実に実施できる環境を整備する
資源の確認やスケジュールの調整
②突発的事項により発生するものの記録
瞬時に影響範囲を見積もり対策を講じる
回復に要する時間などを含め院内に連絡する
トラブル原因の調査のため、発生時のデータ環境を保存する
対応内容の記録を残す
責任者に報告書を提出して説明する
③利用者管理の方法
データに対する責任の所在の明確化と
責任の所在を遡及できる環境の整備
利用者登録とユーザ権限の管理
ユーザの変動が激しい
緊急時のアクセス権の付与の問題
アクセス権の設定は医療の妨げにならないように、
プライバシー保護の観点のバランスで決定
利用者のパスワードでのログイン管理
情報のセキュリティーポリシーを作成し徹底する
④利用者アクセス権の抹消
退職、転職者はシステムから消去するのではなく、
アクセス無効の処置とする
人事情報との連携は難しいので、
業務手順の中で規定する必要がある
⑤業運用上の問題点抽出と改善
医療情報技師 効率よく情報システムを動かすこと
コミュニケーションが重要
【 医療情報システムのトラブル時対応】
● トラブル定義
①トラブル
システム障害 コンピュータシステムの機器やソフトの障害によるもの
運用障害 処理手順の誤りや実行の遅延によるもの、
不十分な情報伝達の結果発生した認識上の欠陥に起因するもの
②トラブルの対処法
緊急性と回復時間
緊急性 診療への影響度、患者との関係
回復時間 運用対策として代替案を実施するかの判断
● システムの障害対策
(1)ソフトウェアの設計ミスによる障害
発見が難しい、
発見時には取り返しがつかない状態の危険がある
リリース前のテストの実施が重要、
あらゆるケースを想定した網羅性
テスト環境でのテストの実施、
テストデータの整備・充実とチェック体制の確立
(2)ハードウェアの障害
一定確率で必ず発生するものと考える
障害発見のスピード、障害の程度と診療への影響の把握、
最も適切な対処方法を最小の時間で決定し、手配する
(3)医療情報技師の仕事
①日常の監視体制
・オンライン監視 コンソールの情報、警告
・ネットワーク監視 障害確認
・日常ジョブ監視 終了確認とデータ量の確認
・オンライン環境監視 ディスク容量確認
②システム障害の発見
・発見者からクレームの電話
・アラームランプ点灯
・ジョブの異常終了
・コンソールのエラーメッセージ・ログ情報
・データ処理量が異常に少ないまたは多い
・オンライン業務の異常終了
③システム障害発見時の処理
・情報収集
目的は、発生源の特定、影響範囲の特定、トラブルの種類の特定、
原因追及・原因分析のためのデータ保全
・関係部署への連絡/院内放送など
・対策の決定
対策の選択を左右する因子は、診療への影響、代替案の有無、
復旧見通し、復旧後の作業量
④対策決定後の処理
・関係部署への連絡/院内放送など
・システム復旧後にデータを復旧させるために必要なバックアップ作業
・システムの復旧
・管理者への報告
⑤システム復旧後の処理
・関係部署への連絡/院内放送など
・管理者への完了報告
● 運用障害対策 不注意や行き違いによるデータの破損
データ量の増大によるレスポンスの低下 → システムの最適化
システム障害対策マニュアルの整備とマニュアルの周知徹底と教育
障害解決後の反省会も関係部署を巻き込む
● 障害対策並びに運用マニュアルの作成
<必要なマニュアル>
機器の利用説明書
システムの利用手順書
障害対策マニュアル
運用マニュアル
①システム全体にかかわる事項
全体がわかる図
・機器構成 機器の仕様書、障害時の連絡先
・システム構成
機能仕様書、プログラム仕様書、データベース一覧と構造、
ネットワーク関連図、各サブシステムの連絡先と問い合わせ先
・ライセンス関係
ライセンスの種類と台数、ライセンス搭載端末の設置場所と台数
②保守体制に関する事項
・保守契約書関係
保守契約の範囲/保守の時間帯
保守体制に関する契約書または誓約書
ライセンス関係書類
・保守報告書関係
定期点検報告書
保守関連チェックリスト
機器の保守履歴/定期点検スケジュール
③バックアップに関する事項
・バックアップに関する事項
バックアップ・リスト操作手順
正常終了など確認項目、作業日誌記載項目
データ整理(削除)判断基準
・データバックアップ確認チェックリスト
作業日誌様式など
・バックアップデータの保管
保管場所の条件
具体的な保管場所/保管方法
④監視体制に関する事項
・運用体制
日勤運用体制、夜間運用体制、緊急連絡網
・遠隔監視体制
遠隔監視操作手順所
遠隔監視環境のセットアップ方法
遠隔監視の範囲に関する規定
⑤周辺機器の故障に関するユーザー向け説明書
ユーザーも積極的に参加してよりよいシステムに育て上げる
病院全体の費用/効果を上げるにはユーザが
自分でできることはユーザに委ねる
・ユーザー向けの取扱い説明書
簡単な点検と修理方法
・機器の故障の見分け方
チェック項目、故障時の対応/院内の連絡策/連絡項目
⑥トラブル時のチェック項目
・システム障害からの回復手順
端末を再起動する前の処理に関する注意事項
チェック項目やハードコピーの取り方
・連絡先
障害の状況説明の方法など
⑦システム障害時の対応
・障害のチェック手順
・命令系統/連絡体制に関する取り決め
・回復手順
範囲が限定されていて、切り離して対処できる場合
システム全体を停止しなければならない場合
・伝票運用の切り替え判断基準
・伝票の様式
・説明の方法
院内放送の基本パターン
⑧教育に関する事項
・操作訓練に関する取り決め
訓練の開催情報の連絡体制
操作マニュアルの説明会
● データ処理と分析支援
医療機関には診療に関わる大量のデータが蓄積されている
病院経営分析は、入院診療費の包括評価制度により、
経営戦略なくして病院経営できないために重要になっている
● 必要な視野・関連情報
①財務会計
②財務諸表
貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書
③管理会計
④収入と支出
⑤流動資産と固定資産
⑥損益分岐点
⑦経常利益
⑧減価償却
⑨特別損益
⑩棚卸
⑪POS
⑫発生主義、現金主義
⑬病院経営指標
在院日数 = 退院日-入院日 + 1
病床稼働率 = 1日平均在院患者数/当該機関の病床数
院外処方率=院外処方数/総処方数
経費率=経費/医業収入
査定率 診療報酬の審査で妥当性がないと減点査定になる
● 病院経営のためのデータ処理・提供
経営分析の概念図
医事会計、人事給与、物品管理、手術室管理、給食管理、財務
↓
経営分析システム
↓
財務会計 損益計算書、貸借対照表、キャシュフロー計算書
管理会計 在院日数・稼働率、科別診療報酬請求額・コスト
診療圏分析
・患者ごとの収支分析
・入院1日当たりの収入分析
・診療圏分析 どの地域から何人ぐらいの患者がきているか
● データ分析要求に対する適切な手法選択
財務会計は、市販の経営分析ソフトウェアで出力できる
管理会計はエクセルやAccess、解析ソフトでデータベースから
データを抽出して処理する。
● 医療情報システムの利用規約
患者の権利に配慮し、患者の信頼を損なわないようにする
● システム利用規約に必要な事項
対象の医療施設の情報システムの運用ポリシーを明確にする
明確にする必要のある事項
①いつ、だけが、どこで、何の目的で、どのように、
どの医療情報を作成できるか
②管理責任者の役割/権限/義務は何か
③利用者が規約に違反した場合の処置
患者が適切な医療を受ける権利の面からの項目
①医療情報の一次利用と二次利用とを区別して規約作成
②正しい情報を作成する義務と利用目的に合致する範囲で利用する義務
③医療行為実施の際に、必要なときに必要なデータが使われて、
適切な医療がされる保証
④目的外にデータが利用されていないこと、
監査者、監査方法に関する記述
● システム利用時の倫理面
患者情報を扱うという医療の特殊性に関して留意すべき事項
①患者プライバシーの問題
②情報主体者(患者)の情報システムとの関わり方
プイバシーとは、自己に関する情報をコントロールする権利
自己に関する情報が自己の意思に反して、
あるいは誤った内容で流通していくことを制限する権利
他者が保管する自己に関する情報を知る権利
情報主体の患者との情報共有(インフォームドコンセント)
医療専門職に任せるだけでは医療効果に限界がある
患者も自らが自分の病状や治療の目標を理解し、
努力することが治療効果の向上に効果がある
利用規約に追加すべき事項
①情報主体の患者も利用資格者に加える
②自己情報のコントロール権の保証
③情報主体の遵守事項
利用できるのは自己の情報のみ、システムに損害を与えない
④罰則規定
情報主体にも適用
● システム利用規約の作成
(1)利用客規約作成手順
①利用規約原案を作成
②条文の調整(成文化)
③オーソライズ
医療機関の最高決定機関に諮り承認
(2)運用手順
①運用細則作成
利用者管理細則、端末やプリンターの利用細則、
ネットワーク利用細則、
データ利用細則、各サブシステムの利用細則
②実運用のための準備作業
③監査の実施
④違反行為が発覚した場合の処置
(3)利用規約の条項
・趣旨
・利用目的
・定義
・責任体制
・情報のコントロール権
・個人情報のアクセス権
・集合情報のアクセス権
・情報の作成責任
・情報の利用責任
・利用者の資格
・利用の申請/内容の変更と中止
・利用の承認
・利用の制限
・他の情報システムの接続条件
・遵守事項
・守秘義務
・利用の監査
・利用の承認の取り消しなど
・損害賠償
・守秘義務の違反に対する損害賠償
・雑則
● 医療情報システムの業務運用評価
医療情報システムの導入効果
①医療の質の向上 正確さ、誤り・漏れの防止、診療・研究支援
②業務の効率化 迅速化・省力化
③患者サービスの向上 待ち時間の短縮、情報提供
④病院経営改善への寄与 経費削減、維持請求漏れ防止
システム導入時に機能要件だけでなく、
評価項目と評価基準の設定もしておく
評価はシステム導入後も定期的に実施、システムの問題の把握をする
● システム導入効果分析のための測定項目 評価の方法として
①目的をほぼ満足する簡便な方法
②ユーザ部門の正しい理解が得られる方法
③システムに関する責任の自覚が促進される方法
④調査が継続して行える方法
(運用上の評価のための主な測定項目)
・業務の効率化
業務のターンアウンドタイム、残業時間、休暇取得状況、
患者待ち時間、外来患者診察時間、患者数
・医療の質向上
処方・注射の疑義照会件数、指示受付部の確認・問い合わせ件数、
インシデント・アクシデント発生件数
・患者サービス向上
待ち時間、在院時間、クレーム件数
(システムの利用度評価のための主な測定項目)
・アクセスログ
クライアントの利用頻度、利用時間、システム機能別の利用頻度
・データベース
データの入力率
● システム導入前後の業務の分析と導入効果測定
①業務効率化の測定
業務フローや業務量の調査
②病棟看護業務
業務内容と所要時間を分単位で記録、1週間自己記録
業務内容と業務量の変化を分析
③患者の動態調査
院内の患者フロー、特に外来患者フロー
カメラを利用する場合は患者へのインフォームドコンセントが必要
● 導入後に起こりうる問題 (円滑なシステム導入の条件)
・システムの設計
・開発段階で現状の業務分析、システム導入後の業務フローの設計、
導入直前のシステムテストや運用リハーサルに時間をかける
・システム開発の各段階で機能仕様、性能、完成度の確認を確実に行う
(稼動直後から生じる問題点)
・システム性能に関する問題
要求水準を満たさないレスポンスと信頼性、操作性、接続性
・アプリケーションソフトウェアに関する問題
バグの発生、マスタセットアップの不備、操作性、思いの違い、
仕様確認の漏れ、機能不足
・運用上の問題
業務フローと業務分担変更に対する職員の抵抗、
境界業務の分担をめぐる部門間の摩擦、
作業環境、システム導入後の運用に関する理解不足、
操作の習熟度不足、
トラブル対応の不備と不徹底、
職員の動線と機器配置の不整合
(情報システムの品質評価指標)
・機能性
ユーザのクレーム、運用に支障、セキュリティの充足度
・安全性
ハードの故障、ソフトのバグ、発生件数と収束度
・使用性
単純性、効率性、統一性、正確性
(稼動後時間をおいて現れる問題点)
・システムの性能に関する問題
データ量・トランザクション量の増加
・アプリケーションに関する問題
開発・改修のバックログの増加、陳腐化、硬直化
・運用上の問題
業務フロー、人員配置、阻止の変更、新規事業の発生、
制度改正、システムに対する新たなニーズ発生、ニーズの変化、
システムに対するユーザの幻滅とあきらめ
● 導入後の問題点列挙と改善策の立案
対策の必要度、緊急度、優先度を評価
対策案の効果の予測と経費と工数の予測
中立で全体的な視点で、建設的かつ現実的な改善策を立てる
(情報システムの問題点に対する改善策)
・ハードウェア対策
機器の交換・追加、再配置、アップグレード
・ソフトウェアの対策
バグ解決、システムチューニング、データベースの再配置、
アプリケーションの改修、OSやミドルウェアのアップクレード
・運用上の対策
ユーザ教育の徹底、業務フローと業務分担の変更、
人員配置の変更、システム
活用に対するインセンティブ
【 医療情報システムのコストパフォーマンス】
● コストとパフォーマンス
投資と成果のバランス
単位投資当たりの成果が最大のところまでがシステム化の範囲
初期コストとランニングコスト
コストパフォーマンス 処理量で1時間当たりの処理件数、1ヶ月当たりの売り上げ
コストベネフィット 患者や職員の満足度
● コストパフォーマンス評価に必要な視点
(病院情報システムの評価項目)
・プロフィール
開設主体、診療科目、病数、看護基準、情報システムの対象範囲
・コストに関する項目
コンピュータ関係経費・職員・派遣受入要員数、医業費用、
委託費用、端末数
・パフォーマンス・ベネフィットに関する項目
入院・外来患者数、入院・外来収入、医業収入、レセプト枚数、
検査件数、処方箋枚数、予約件数、手術件数、患者待ち時間、満足度
(研究方法一覧)
・観察的研究
横断的観察 ケースシリーズ研究、横断調査研究
長期的観察 ケースコントロール研究、コホート調査
→ 医療情報システム評価では不可能
・実験的研究
自己コントロール試験研究、無作為化試験研究、クロスオーバー試験研究
● 個々の情報システムの評価
ケースシリーズ研究
観測結果の詳細をまとめた報告、
まったく新しい試みや数少ない事例の報告
システム監査基準
システムの安全性、信頼性、効率性、可用性、機密性、保全性、
有用性、戦略性などをトップマネージメントの視点で独立した立場で調査
● 導入前後によるコストパフォーマンス評価事例
導入前のデータと導入後のデータ
医事部門業務の評価 人員数、処理伝票枚数、レセプト枚数、延べ患者数、医業収入
→ 1.3~3.8倍
生化学検査部門の評価 検査技師数、検体数、検査項目数 → 2.1~3.1倍
オーダリングシステムの評価 外来および入院収入増、
無駄なき給食の削減/超過勤務削減/人員削減、省スペース効果
→ 5年間の投資と経費 6.3億円 に対して 5年累積効果は 15億円
外来患者の院内滞在時間 3h20min → 1h8min
総事業費に占める情報投資比率 2%
経営改善効果比率 5%
● 全国横断調査の事例
代表的な指標 平均±標準偏差
入院レセプト枚数/職員数 110±47
外来レセプト枚数/職員数 1087±1444
外来患者数/外来医事端末数 162±86
入院患者数/入院医事端末数 132±94
コンピュータ経費/医事経費
医事集中システム 1.3%
オーダリングシステム 2.3%
オーダーリングシステムでの効果ありと判定した医療機関の割合
・患者待ち時間の短縮 90%
・診療効率化、物品管理充実 80%
・事務/看護/コメディカル労働軽減 70%
・病床管理充実、医師労働軽減 50%
● 電子カルテとネットワーク時代の評価
電子カルテの導入 平成14年 2% → 18年に60%
導入効果 医事などの部門の効果、各種オーダリング効果に加え
・カルテ、X線フィルムの医事資料の保管スペースと管理要員の削減
・患者説明の充実
・治療計画の標準化
・医療の安全性向上
地域医療ネットワーク
・医療の効率化と機能分化
・癌などの長期治療の必要な疾患の増加
・保健福祉との連携
地域医療の目指すもの
・社会保障費の削減
・入院日数の削減などの個人のQOL向上
● 医療情報システムの性能評価の要点
機能チェックはすれるが、性能チェックが十分でない
● 医療情報システムの性能チェックに必要な視点
(1)一般的な情報システムの性能
①サーバの計算能力 CPUやメモリ
②サーバのハードディスクの性能 容量とRAID
③データベースとトランザクション処理性能
④通信速度 LANの種類
⑤オンラインレスポンス PC性能
⑥耐障害性能 UPS
(2)医療情報システムの性能
①24時間365日稼動
②真正性、見読性、保存性 電子保管
③1秒以内のオンラインレスポンス
④十分なデータチェック機能
⑤多様な出力
● 性能評価の具体例
(1)データベースの選択時の評価
RDBと木構造DB
固定長 ディスク容量は差なし、アクセス時間で3~40倍
非固定長 ディスク容量で4~20倍、アクセス時間で20~80倍
(2)データベースの最適化設計
データ量増加に伴うレスポンス悪化
ディスク領域の最小化とディスクアクセス回数の最小化
(3)インターネット/イントラネットを使った業務アプリケーションのベンチマーク
アクセス速度が不安定
オブシェクト方式と直接アクセスでは3倍のアクセス時間差
(4)暗号化データベースのベンチマーク
暗号化は必須
暗号化によるシステム負荷増とレスポンス劣化
■
医療情報システムの調整能力
● 関係者間でのコミュニケーション
医療関係者と情報処理企業とにはコミュニケーションギャップがある
医療業界とシステム業界の相互理解 両方に精通した人間はいない
用語の問題がある
システム業界
契約行為 契約外のことはしない
医療業界
施設の分類 20床以上が病院、未満が診療所
医療現場、医事会計、医療経営に分かれる
医療は部門の主張が強い、医師は全体にわたり発言権を持つ
医療現場の業務は、患者を診察する医師から発生する。
医事会計では診療行為をポイント化してレセプトを作成する。
医療保険の点数は2年に1回改定
点数の解釈は地方によって異なる場合がある
医療経営では、病院は専門分野を明確にし、入院医療に特化、
診療所はかかりつけ医として地域医療を中心に展開し、
重傷者は病院に紹介
病院ではクリティカルパスやDPCの導入
● 要求仕様の作成
(1)目的の明確化
目的や目標の明確化
(2)業務の把握
業務マニュアルの作成
無理、無駄の省略、クリティカルパスの作成
(3)ニーズの抽出
具体的な業務から課題とニーズを引き出す
他部門との連携の課題、他部門とのトラブル例のヒアリング
(4)ニーズの整理
限られた予算で効果を出す
予算がある程度ある場合は最大下のものから絞り込む
予算に余裕がない場合は最低下のものに優先度で加えていく
(5)要求仕様への反映
必要な入力、処理方法、出力形式を明文化
ネットワーク図、機器の配置・仕様、サーバの構成・機能をまとめる
● コミュニケーションの方法
(1)一般原則
①疑問点はその場で解決
②互いの立場を尊重
③図示による説明と確認
(2)初期の対応
①適切な人選
病院側 リーダーシップの発揮できる人材、プロジェクトの推進力
ベンダー側 医療業界に精通するだけでなく、マネジメント力が必要
②プロジェクト遂行方法の確認
連絡体制、スケジュール、議事録の作成、要求仕様書の見直し、
会議やメーリングリストの利用、作成ファイルの共有方法、責任分担
③初期コミュニケーションの確立
徹底した集中討議、考えと方法を付き合わせる
(3)開発期間中の対応
①コミュニケーションのレベルに分け、効率よく業務遂行
メーリングリスト、電話会議、対面の会議
②議事録はすみやかに作成と承認
③プロトタイプの作成
プロトタイプでの説明は理解を早める
画面を見てのコメントは参画意識を高める
● 病院内関係部局と関係SEとの調整
開発時に構築される関係
(1)基本的な組織
医療機関 経営者の下に開発責任者、各部門の担当者
メーカー リーダーSE サブシステムごとのリーダー
(2)医療機関内の調整
経営者と開発責任者 権限委譲と参画意識
(3)企業内の調整
開発責任者と各部門 業務責任の明確化、部門調整能力が必要、
業務フローとマニュアルの作成
(4)開発責任者間の調整
開発責任者とメーカーSEとの調整 組織の代表として利害が衝突
(5)各サブグループ間の調整
議事録の作成で決定事項の共有が重要
サブグループでの検討内容の決定事項をリーダーは確認し、
調整が必要な項目に速やかに対処する
● システム導入による影響部門への説明
(1)医師
医師の事務作業の増加が背景にある
初期段階を過ぎると医師の効率化になる
経営者の指導力による
(2)入院病棟
情報システム導入のキー
病棟がオーダリングシステムの機能のほとんどを使う
病棟業務はオーダリングの実践
手順を変えると医療事故の要因になる。標準化されていない
参画意識と業務マニュアルの作成がポイント
(3)各部門
他の部門は独立していて、入力・出力情報は決まっている
一歩進んで、部門の利益の出る提案が望ましい
● 契約条件の交渉
規模による違い
(1)大病院
要求仕様書作成段階から大手企業との契約が望ましい
要求仕様書は調査会社への外注になり、不十分なものになりがち
受注後に見直しが発生することが多い
(2)中小病院
オーダリングシステムの普及率5%と低い
病院の個性が強く、パッケージシステムの移植が難しい
システム導入のスケールメリットが明確でない
システム開発の資金繰り
職員の教育が不十分でスキルが低い
(3)診療所
リースでレセプトシステム導入進む
院長のやる気しだい
● 開発費と開発後の費用
情報システム費用は年間収入の2%が適正
入院病床100床の医療収入が年間10億円で2000万円、
リースならば5年で1億円程度(投資は6600~8000万円)
稼動後の費用として保険改正の費用、ディスクの増設など
契約と検収
要求仕様を満たすシステムが完成したことを確認する。
メンテナンス契約
ハードディスクの保守
稼動後、3~6ヶ月後の改修が多い
■
医療情報システムの教育・責任能力
● 情報リテラシー教育
情報活用能力
情報基礎リテラシー 情報の整理と分析
コンピュータリテラシー コンピュータやソフトウエアの操作
ネットワークリテラシー インターネットでの情報収集や発信、倫理
医療の場面での情報リテラシー
コンピュータリテラシーが必要
基本的な操作
職種や施設ごとのシステムの利用方法
● 医療情報の活用についての注意事項
病院情報システムで取り扱うデータは個人情報
情報セキュリティーの観点からの注意必要
データベースへのアクセスの権限の許可・承認のルール
データの二次利用
匿名化の処理
他施設での共同利用や提供は倫理委員会の承認
● 情報リテラシーの講習
企画の注意
①教材の内容は医療現場に直結する話題で、興味を持たせる
②職員の異動に関する対策
③受講者はソフトウェアに関する知識に差がある
④講習の実施時間に配慮
⑤複数の担当者で実施する場合は、毎回の講習の内容、
コールの設定を具体的に決める
実施の注意
①受講者数のコンピュータの準備
②画面をプロジェクターで表示
③講師以外の補助者
④毎回の講習の最後に独力でするタスク、各人の到達度の確認
● 医療スタッフへの操作方法の体系的指導
システム全体やオーダリングシステムのように大部分のものが
使用するシステムは情報管理室が担当
特定の部門の部門システムは部門の担当者を選任
● 医療スタッフへの医療情報システムの操作方法指導
一から順に教える体系的な方法、
課題を与えてその解決をさせる実習的な方法
最初は体系的な方法
少し分かってくると実施有的な方法
操作に要する時間についても配慮
指導補助者の養成、OJTでの訓練
異動者や中途採用者は、前に使用したのと異なるシステムの利用になり、
操作法のみが指導の中心になる
● 既成の操作マニュアルの抜粋による説明
操作教育では操作マニュアル全体を説明できる時間がないので、
抜粋の説明になる
抜粋版のマニュアルを作成して説明する方法がある
→ マニュアルとの対応が難しくなる可能性がある
マニュアルに基づいて゛はっ水で説明する方法がある。
→ 講習中の取扱いが面倒
マニュアルのWeb化で最新で必要時に参照でするようになる
● 医療スタッフへのトラブル時対処の適切な指導
(1)診療現場からトラブルの報告を受けた場合
①トラブルの発生日時、部署、操作者、操作内容、トラブル状況を確認する
②必要な場合は画面のハードコピーを取らせる
③トラブルの影響範囲を判断する。
単独の障害で緊急の場合、直ちに現場に出向いて処置
余裕のある場合は、喉頭で指示して操作者に
トラブル対応の操作を実施
局所的でない仕様外は、操作者にその旨を告げ、
対応手順に従って処置する
④システムの停止や切り替えがひつような場合は
上級者に報告し判断を求める
(2)簡単なトラブルへの対処
・操作補助者を部門で養成して協力してもらう
・対処方法をマニュアル化する
・頻度の多いものは教育時に説明する
● 患者への説明・教育
患者への情報提供の必要性
患者の知る権利
①正しいデータが適切に収集・蓄積されているか
②必要なときに必要ななデータが利用されているか
③目的外にデータが流用されていないか
インフォームドコンセント
患者自らが病状と治療の目標を理解し、
積極的に努力することが治療効果を高める
患者への情報提供方法
電子カルテシステムは医療専門職の利用だけでなく、
患者への情報提供手段としても意義がある
ベットサイドに端末を設置し、
診療・看護プロセスを患者に分かるように表現
患者条項
患者の情報コントロール権と自己責任を明示
● 医療スタッフへの倫理教育
利用者への情報倫理教育の必要項目
(1)患者情報の取得
①個人情報の保護と守秘
②生涯医療情報の管理
きわめて困難、情報が分散している
セキュリティやフライバシー保護の点で社会的に認知されていない
(2)情報開示と患者の権利
①診療録の開示
②自己決定権とセカンドオピニオン
インフォームドコンセント
(3)医学研究と診療情報
治療統計、疫学調査への利用
(4)情報システムの管理
①電子保管の原則 真正性、見読性、保存性
②セキュリティ対策
情報システムの機能
組織の運用
利用者個人のモラル
(5)著作権
(6)インターネットのエチケット
①セキュリティの自己管理
②メールの使い方
③掲示板の利用方法
● 情報倫理についての教育マニュアル作成
マニュアル作成と教育のための体制
教育マニュアル
①基本的な考え方
②具体的な例と問題点と対策
● 情報専門職への倫理教育
医療の特殊性の理解
守秘義務について遵守
患者情報の取扱いとアクセス情報の分類の理解
情報処理の倫理
情報処理学会の倫理綱領
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